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中国の農地の実態(出張行ってきました)。

先月25日、新華ニュースから「中国、1億8000万ムーの面積で土壌塩性化進行」という記事が出ていました。「中国農業部の銭克明チーフエコノミストは5月25日に行われた第3回中国国際農商ハイレベルフォーラムの席上で、中国の農業環境問題が際立ち、農業生態系の機能喪失が深刻だと明らかにした。」との内容でした。

http://www.xinhuaxia.jp/social/35787

中国は近年、国策として農業(食料の国産強化)に注力しており、自治体が率先して農業支援に補助金・助成金を投下しています。また直近では、農業関連企業が立て続けに上場したこともあり、ベンチャーを含め熱い注目が集まっている分野です。そのためか、日本にいる私たちにも、宣城(安徽省)や無錫での農業技術支援や流通網構築支援の問い合わせが頻繁に入ってくるようになっています。

ということで、ちょうどさっきの記事も出たこともあり、視察も兼ねて行ってきました。これから数回に分けて「中国の農業の現状」をご報告したいと思います。

 

まずは、こちらをご覧ください。

1500ha

ある省(日本では都道府県にあたる)と複数の市が共同で投資して設立した、いわゆる農業公社の敷地案内図です。上の写真に写っている白い1本1本が、全部「ハウス」で、この写真の敷地(周辺の余剰地を含む)だけで「1,500ha」あります。これが三か所、計「5,000ha」をこの一社が運営しています。日本では10haもあれば大型農家なのですが、中国はケタが違いますね。

見渡す限り、ハウスが立ち並び、

ハウス1@無錫

遮光フィルム付の高性能ハウスや、

遮光ハウス@無錫

オランダ型の耐候性ハウスもずらっと並んでいます。さらに、光熱費(電気代、水道代)は、全部「タダ」だそうです。

オランダハウス

しかもこの地域は、上海から少し内陸に入った温暖で「大雨、大雪、大風のない」、太湖を取り巻く「水の豊かな」地域です。厳しい自然環境の中で戦う日本の農家さんからすると、垂涎の環境と設備が整っているのです。

 

しかし、中身はというと。

雑草が生えたままで収穫すらままならないハウスがたくさんあります。

ハウス内@無錫

働いている人に聞いてみると、農場が大きすぎて(ハウスが多すぎて)1/3以上は手が回らないのだということ。ハコだけ作って、中身の運営がままならない、というのは日本の公共投資と同じなようです。

収穫風景

収穫風景は、日本と同じような感じですね。(収穫しているのは、日本のファミレスで出されているカットインゲンに使われる長~いサヤインゲンです。本当は柔らかくてスジもなく、生で食べられる野菜です。)

しかし、人手が足りないので、作付管理や収穫できるものもできない状態にあるハウスが大量にあります。近くの農業大学の学生や農家を雇うようにしているそうですが、鉱工業でも人材募集が活発なため、思うように人材採用が進まず、さらには「技術指導できる人材が決定的に足りない」とのことでした。

そもそもこれだけ環境が良く、広大な平面が確保できる地域なので、ハウスにせずに露地栽培で効率を上げることもできたのでは?わざわざハウスにしたのでかえって作業効率が悪いのでは?という質問をしてみました。

これに対しては、企業の信用や上場まで想定した場合、「(工業)技術的な管理」をしていることが大事だそうで、自治体としても「施設園芸プラットフォーム」や、さらには「植物工場」への投資に注力しているそうです。環境や大気汚染への強い懸念が背景にあるとはいえ、技術志向の強い70~80年代の日本のような話ですね。

 

要は、今の中国は、国として農業投資に注力し設備やインフラは整えたものの、産業として最も重要なことが「足りない」現状です。

それは、「効率的で安全な農業生産技術」や、その「技術を有する人材」です。

私たちが手掛けている農業支援プロジェクトも「日本の農業生産者の技術は極めて高いと聞いている。指導を受けて、日本でも取り扱ってもらえる(輸出できる)レベルの生産ができるようになりたい」という要望から始まったものですが、こうした現状を見ると、ことさら「食(農業生産)の分野で日本と中国の強固な連携モデルを構築できる」、と確信するに至った出張でした。

 

(続く。次回は、中国で注目集める「植物工場」や、中国における「集荷・出荷管理、流通」の現状についてです。お楽しみに。)

藤本 真狩神戸大学経済学部を卒業後、京都大学医学研究科在籍…

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